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EBITDAのここがおかしい
2004年 10月 29日
EBITDAというおかしな指標があります。米国でニューエコノミー論が盛んだった時期に出てきた新しいバリュエーション指標というのは基本的にどれも陳腐なのですが、このEBITDAもかなりの数の投資家をミスリードした罪作りな指標です。
EBITDAの定義については、こちらをどうぞ。 まず下記の例を見てください。 A社はオフバランス経営を実践し、償却資産を持たずにアウトソーシング、リース、レンタルをフル活用しています。アウトソーシング等の費用を「費用B」とします。一方B社は100億円の設備を購入し定額法で毎年20億円償却しています。
同じ売上規模・収益力の会社間で設備投資政策の違いによって、EBITDAに2倍の差が出てしまう例です。固定資産をより多く抱えた企業が有利になってしまうというおかしな現象になります。経済情勢の変化著しいこのご時世にそぐわない経営方針が支持される指標なのです。 さらに、そもそも論を考えて見ましょう。財務諸表はB/S、P/Lの一対で成り立っています。(正確に言うと利益処分計算書もありますが)当期の実現損益はP/Lに、財産状況はB/Sに表れます。減価償却に限っていうと、B/Sがダム機能を果たしており購入時一括費用化を避け、設備の収益貢献期間に按分してP/Lへ吐き出しているわけです。しかし、EBITDAではB/Sとの整合性関係なしで機械的に原価償却額を差し戻します。償却資産の購入に掛かったコストはどこかに消えてしまうわけです。実に片手落ちの指標です。これでは10年間のEBITDAの推移を見たときに、単純に償却固定資産の購入コストを除外したP/Lになってしまいます。つまり、極端なオンバランス経営をする会社が有利です。 さらにさらに、EBITDAでは企業買収の際に発生するのれん代まで差し戻します。つまりEBITDAの観点から見ると、直近に大きなM&Aをした企業ほどいい会社ということになってしまいます。ただし、のれん代に関してはEBITDAよりもっと巧妙(悪質)な目くらまし法があります。一括償却で特損計上するという方法です。これについては今回は触れませんが、早期の規制が必要な事項だと思います。 EBITDAはそもそも、国ごとに減価償却法や税金が違うので、それらの差異を調整するために作られた指標ですが、EBITDAを使うことによって発生する実情との乖離は、減価償却や税金などの些細な違いよりもはるかに大きいものです。 財務分析の基本は、B/S、P/L、CF計算書です。EBITDAのように、財務諸表の中にある指標から乖離していたり整合性のない指標というのは実態を反映していないことが多いです。
by y-46
| 2004-10-29 01:56
| ビジネス
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